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孤独死は年に何人か — 警察が数えた7万6,941人と、賃貸で見つかるまでの平均19日

「孤独死」に法律の定義はない。警察庁が2025年に扱った死体のうち、自宅で死亡した一人暮らしの人は7万6,941人。内閣府は死後8日以上で見つかった2万2,222人を孤立死と推計する。賃貸住宅の保険の記録では、見つかるまで平均19日、原状回復の損害は平均49万4,344円、最大756万円だった。

2026-10-05 | 執筆・編集:痕跡マップ編集部
目次(9項目)

「孤独死」は、法律の言葉ではない。国土交通省の告知のガイドラインには、脚注に一度だけ出てくる。厚生労働省は「孤立死」と書き、内閣府は2025年に初めて国としての推計を出した。数は、誰が、どの範囲を数えたかで変わる。

この記事は、公的な統計と業界団体の記録を、数えている範囲ごとに並べる。読者が「孤独死の数」を一つの数字として覚えるためではなく、ニュースで見た数字がどの範囲の話かを見分けるための記事だ。

「孤独死」に法律の定義はない

内閣府の「孤独死・孤立死」ワーキンググループが2025年4月にまとめた報告書は、孤立死の概念をこう書く。「誰にも看取られることなく死亡し、かつ、その遺体が一定期間の経過後に発見されるような死亡の態様」。

数を推計するための定義は、もう少し狭い。警察が扱った死体のうち、自宅で死亡した一人暮らしの人で、死後一定日数がたってから見つかった人。自死も含み、年齢の制限はない。報告書は、これは推計のための目安であって「死後何日で孤立死と定義した」ものではない、と念を押している。

用語も割れている。内閣府の資料によると、報道では「孤独死」、厚生労働省は「孤立死」を使ってきた。賃貸住宅の保険を扱う日本少額短期保険協会は、部屋の中で死亡し、その事実が死後に分かった一人暮らしの人の死を「孤独死」と呼び、内閣府の定義を併記したうえで、第1回から使ってきた語を続けている。

警察が数えた「自宅で死亡した一人暮らし」は7万6,941人

警察庁は2024年分から、警察が扱った死体のうち自宅で死亡した一人暮らしの人の数を公表している。

2024年2025年
警察が扱った死体の総数204,184204,562
うち自宅で死亡した一人暮らし76,020(37.2%)76,941(37.6%)
うち65歳以上58,04458,919
死後0〜1日で発見28,75628,398
2〜3日15,42115,865
4〜7日9,98710,456
8〜14日7,5157,570
15〜30日7,3967,504
31〜90日5,1385,195
91〜180日1,1651,273
181〜365日389472
366日以上253208

警察が扱った死体の4割近くが、自宅で亡くなった一人暮らしの人だ。そのうち65歳以上が約76%を占める。日数の分布を見ると、3日以内に見つかる人が半数を超える一方で、1年以上見つからなかった人が2025年に208人いる。

警察庁の統計で、自宅で死亡した一人暮らしの人を死後の日数で分けた模式図。2025年、3日以内が57.5%、8日以上が28.9%
警察庁の統計で、自宅で死亡した一人暮らしの人を死後の日数で分けた模式図。2025年、3日以内が57.5%、8日以上が28.9%

「8日」と「4日」という線は、なぜ引かれたか

内閣府は、上の表のうち死後8日以上たって見つかった人を孤立死と推計する。2024年は2万1,856人、2025年は2万2,222人。警察庁の表で8〜14日から366日以上までを足すと、どちらの年も同じ数になる。

なぜ8日なのか。報告書によると、死後8日以上たって見つかるということは、少なくとも見つかる前の7日間、連絡がつかないことを気にかける人との接触がなかったと考えられ、生前に社会的に孤立していたと強く推し量れるからだ。

参考値として、死後4日以上で見つかった人も出している(2024年3万1,843人、2025年3万2,678人)。4日の根拠は法医学の教科書で、死後3〜4日で体の表面に変化が出るとされるため。ただし季節や環境で大きく変わる、という留保がついている。

賃貸住宅の記録:1万2,105人、男性が83%

日本少額短期保険協会は、孤独死に備える保険から保険金が支払われた事例を集計している。2025年12月の第10回レポートの累計(2015年4月〜2025年3月)はこうだ。

男女の差について、レポートは、賃貸住宅の男女の居住比が60対40であることを考えても男性が多い、と添えている。65歳未満が半数近いことは、警察庁の表(65歳以上が約76%)と比べると目立つ。賃貸住宅の居住者の年齢構成が違うので、同じ現象を違う窓から見ている。

見つかるまで、平均19日

同じレポートで、亡くなってから見つかるまでの日数は平均19日(男性19日、女性17日)。分布は、3日以内37.0%、4〜14日28.3%、15〜29日15.4%、30〜89日15.8%、90日以上3.5%。

最初に見つけた人は、管理会社など23.6%、福祉関係20.4%、警察6.4%で、職業上の関係者が合わせて50.4%。親族は20.8%、友人・知人12.8%、他人15.9%だった。見つける役を、家族より仕事で関わる人が担っている。

片付けの費用は、平均と最大が10倍以上違う

保険金の支払いから見た費用の記録。

項目平均損害額最大損害額
遺品整理(残置物の処理)294,131円4,253,473円
原状回復494,344円7,564,673円
家賃の補償(平均支払額)337,035円—

2024年度だけを見ると、原状回復の平均は610,507円に上がっている。平均と最大の差が10倍を超えるのは、見つかるまでの日数と部屋の状態で費用が大きく変わるからだ。保険に入っていた人の記録なので、持ち家は含まれず、異常値は除いてある。

賃貸住宅の孤独死の費用を平均と最大で並べた模式図
賃貸住宅の孤独死の費用を平均と最大で並べた模式図

東京23区の内訳:単身で自宅で亡くなった人の37.2%が8日以上

東京都監察医務院は、23区で自宅で亡くなった単身世帯の人の統計を出している。最新は2021年分で、5,851人(男4,130、女1,721)。死後の日数の内訳は、0〜1日17.6%、2〜3日27.3%、4〜7日18.0%、8日以上37.2%。男性は41.8%、女性は26.2%が8日以上だった。

警察庁の全国の表では8日以上が28.9%(2025年)なので、都心の単身世帯のほうが見つかるまでが長い。ただし監察医務院が数えるのは異状死として扱われた人で、警察庁の表と範囲が同じではない。

三つの数字は、数えている範囲が違う

ここまでの数字を、範囲で並べ直す。

出どころ数えている範囲3日以内に見つかった割合
警察庁(2025年)警察が扱った死体のうち、自宅で死亡した一人暮らし57.5%
日本少額短期保険協会(累計)孤独死保険から保険金が出た賃貸住宅の事例37.0%
東京都監察医務院(2021年)23区で自宅で亡くなった単身世帯の人44.8%

割合はこの記事で計算した。同じ「孤独死」でも、警察の統計は持ち家も含む全国、協会の記録は保険に入った賃貸、監察医務院は23区の異状死だ。ニュースの数字を見たら、まずどの範囲かを見る。

告知との関係は、別の記事で

病死などの自然死は、原則として告げなくてよい死だ。ただし長く見つからず特殊清掃などをした場合は別扱いで、賃貸では見つかってから概ね3年という目安がある(告知義務の記事)。ガイドラインが脚注で引く特殊清掃の説明は、孤独死などがあった住居で、元に戻すために消臭・消毒・清掃をするサービスのことだ。

裁判例の側では、病死でも心理的瑕疵とされた要素として、遺体が長く放置されたこと、腐敗していたこと、周辺に広く知られていたことが挙げられている(RETIO 116号)。この境目をどう数えるかは、値引きと裁判例の記事に続く。

本文の数字は、各機関の公表資料から転記した。平均と割合のうち「この記事で計算した」と書いたものは、公表された内訳から算出したもの。個別の物件や人を扱う記事ではない。

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参考・出典

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