旧岩淵水門(荒川放水路と隅田川を分けた大正の赤い水門)|何があった場所か
荒川と隅田川が分かれる北区志茂の地先に、赤く塗られた鉄筋コンクリートの水門が残る。荒川下流河川事務所によると、当時の荒川(いまの隅田川)の沿川では明治元年から明治43年までに床上浸水などの被害を出した洪水が10回以上起き、なかでも明治43年(1910)の洪水の被害が甚大だった。これを契機に、明治44年(1911)、岩淵から新しい川を掘る荒川放水路事業が始まった。同事務所は、工事で移転を余儀なくされた住民が1,300世帯にのぼり、移転の対象には民家や田畑のほか鉄道や寺社も含まれたと記す。
水門は放水路と旧河道の分かれ目に、大正5年(1916)に国の直轄事業として着工され、大正13年(1924)に完成した。設計は内務省の青山士が担当した。幅9.09メートルの門が5つ並び、出水時に隅田川へ流れ込む水を毎秒830立方メートル以下に抑える役目を負った。水門の完成で放水路は上流から下流までつながって通水し、放水路の全体は昭和5年(1930)に完成した。その後、東京東部の地盤沈下と計画高水位の見直しで高さが足りなくなり、約300メートル下流に新しい岩淵水門が昭和57年度(1982)に本体工事の概成を迎えて、旧水門は約60年の役目を終えた。放水路の通水時に造られた水門と閘門のうち、現存する唯一の施設とされ、令和6年(2024)8月15日に国の重要文化財に指定された。

近くの痕跡
- 巣鴨プリズン跡(東池袋中央公園)(死の痕跡・約6.4km)
- 「池袋」地名の由来(丸池・元池袋史跡公園)(地の痕跡・約6.8km)
- 寛永寺と江戸城の鬼門封じ(方位の痕跡・約8.4km)
- 浄閑寺(新吉原総霊塔・「投込寺」と呼ばれた寺)(死の痕跡・約8.4km)
時のながれ
- 明治43年(1910) — 荒川で甚大な被害をもたらす洪水が起きる。荒川下流河川事務所は、これを契機に荒川放水路の基本計画が策定されたと記す。
- 明治44年(1911) — 荒川放水路事業に着手する。工事で移転を余儀なくされた住民は1,300世帯にのぼった。
- 大正5年(1916) — 岩淵水門が国の直轄事業として着工される。
- 大正13年(1924) — 岩淵水門が完成し、放水路が上流から下流までつながって通水する。
- 大正14年(1925) — 8月の洪水で、岩淵水門の地点の放水路と隅田川の水位差が2.83メートルあったことが記録される。
- 昭和5年(1930) — 関連工事を経て荒川放水路が完成する。
- 昭和57年度(1982) — 約300メートル下流の新しい岩淵水門が本体工事の概成を迎え、旧水門は役目を終える。
- 令和6年(2024)8月15日 — 旧岩淵水門が国の重要文化財に指定される。
編集部の調査メモ
このページを作るにあたって、編集部が何を確認したか、このページでどう扱ったかを記録しています。
資料で確認できたこと
- 文化庁の国指定文化財等データベースは、旧岩淵水門を延長61.8メートルの鉄筋コンクリート造水門とし、重要文化財の指定年月日を2024年8月15日と記す。荒川下流河川事務所の記載も同じ日付である。
- 荒川下流河川事務所の発表資料は、大正5年に国の直轄事業として着工し大正13年に完成したこと、幅9.09メートルの5門のうち1門が通船門であったこと、隅田川への流入量を毎秒830立方メートル以下に調節する目的であったことを記す。
- 同事務所は、荒川放水路の開削工事で移転を余儀なくされた住民が1,300世帯にのぼったと記す。
そのため、このページではこうしています
- ピンは文化庁のデータベースが示す水門本体の位置である。新しい岩淵水門は約300メートル下流にあり、別の施設である。
現地確認: 未実施
❓まだ分かっていないこと
この場所には、資料ではまだ確認できていない事柄がある。
- 完成の年を、荒川下流河川事務所の平成29年の案内は大正12年(1923)と記し、同事務所の令和6年の発表資料と文化庁のデータベースは大正13年(1924)と記す。
参考・出典
7件出典に基づいて掲載している
- 旧岩淵水門(国指定文化財等データベース)
文化庁 文化遺産オンライン - 旧岩淵水門の重要文化財の指定について
国土交通省 荒川下流河川事務所 - 「旧岩淵水門」の重要文化財指定について(令和6年5月17日 記者発表)
国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所 - 1.求められた荒川放水路
国土交通省 荒川下流河川事務所 - 2.荒川放水路の開削
国土交通省 荒川下流河川事務所 - 岩淵水門と旧岩淵水門をライトアップします!
国土交通省 荒川下流河川事務所 - 【2024年5月17日】旧岩淵水門(赤水門)が国の重要文化財指定に向け答申
東京都北区
この場所について
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