洲崎大神(まっすぐ南を向く参道と、その先にあった舟着き場)|何があった場所か
横浜市神奈川区青木町、旧東海道の宮前商店街に面して洲崎大神がある。横浜市神奈川区の神奈川宿歴史の道の案内は、宮前商店街をさらに進むと洲崎大神に出るとし、源頼朝が、安房国の安房神社の神をこの地に招いたのが、洲崎大神の始まりといいます、と記す。同じ案内は、昔この神社にあった御神木のアハキがなまり、青木町の町名になったといわれている、とも記す。
目を引くのは参道の向きである。社殿の前から南へ、参道はまっすぐ伸びて旧東海道を横切り、そのまま第一京浜に突き当たる。地図の座標から計算すると、この軸はほぼ真南を指し、真南から西へ約1度ずれる。社殿の前から第一京浜までは約150メートル、旧東海道からは約87メートルである。区の案内は、神社前の道を海側へ、第一京浜に出るあたりが舟着き場でした、と記す。区のもう一つの案内は、江戸時代には港湾都市としても繁栄し、洲崎大神の前あたりは海で、その沖の海面に弁才船が泊まり、そこから小さい船で荷物を陸に運んで、神奈川湊にある廻船問屋の蔵に荷物を収めていた、と記す。
海が遠ざかった経緯も区の資料にある。区の歴史年表は、安政6年(1859年)に神奈川が開港し、神奈川と洲干のあいだの通船が始まったと記す。区の案内は、高島嘉右衛門が明治の初めに、野毛浦石崎から神奈川停車場まで、長さ約1.4キロメートル、幅65メートルにわたって海面を埋め立てて鉄道用の土手をつくったと記す。同じ年表によれば、高島町の埋立が完成したのは明治4年(1871年)、新橋と横浜のあいだに鉄道が開業したのはその翌年である。
いま参道の先にあるのは、車の絶えない第一京浜である。区の案内は、『江戸名所図会』に描かれた雰囲気は今も石鳥居や周囲の地形などに残っていると記し、かつて六月のお祭りには、みこしを神社前の海にかつぎ入れ、安房神社の神と対面させるお浜下りという神事が行われたと記す。創建の年を示す記述は区の資料に見あたらない。洲崎という名が砂州に由来するという記述も、区や市の資料では確認できなかった。参道は生活の道でもある。通行の妨げにならないように歩き、境内では参拝の作法に従いたい。

近くの痕跡
- 権現山の跡(絵図のなかにだけ高い山がある)(地の痕跡・約82m)
- 神奈川の大井戸(宿場の名水が、屋根と釣瓶をそなえて寺の脇に残る)(水の痕跡・約224m)
- 神奈川台場跡(海に突き出た扇形と、鍵を借りて見る石垣)(戦の痕跡・約484m)
- 高札場(掲示が立っていた場所と、復原された場所は別にある)(地の痕跡・約525m)
時のながれ
- 源頼朝の時代 — 源頼朝が安房国の安房神社の神をこの地に招いたのが洲崎大神の始まりと横浜市神奈川区は記す。創建の年を示す記述は区の資料には見あたらない。
- 慶長6年(1601年) — 東海道に宿駅伝馬の制が定められ、神奈川宿が置かれたと区の歴史年表は記す。日本橋から三番目の宿場であった。
- 江戸時代 — 洲崎大神の前あたりは海で、その沖の海面に弁才船が泊まり、小さい船で荷物を陸に運んで神奈川湊の廻船問屋の蔵に収めていたと区は記す。
- 安政6年(1859年) — 神奈川が開港し、神奈川と洲干のあいだの通船が始まる。神奈川台場が着工したと区の歴史年表は記す。
- 明治4年(1871年) — 高島嘉右衛門による高島町の埋立が完成する。野毛浦石崎から神奈川停車場まで、長さ約1.4キロメートル、幅65メートルにわたって海面を埋め立てたと区は記す。
- 明治5年(1872年) — 新橋と横浜のあいだに鉄道が開業する。神奈川の停車場は青木橋のすぐ南側につくられていた。
- 明治38年(1905年) — 京浜電気鉄道が神奈川まで開業する。のちの京浜急行である。区の歴史年表は品川-神奈川間、神奈川宿歴史の道の案内は川崎―神奈川間と書く。
編集部の調査メモ
このページを作るにあたって、編集部が何を確認したか、このページでどう扱ったかを記録しています。
資料で確認できたこと
- 横浜市神奈川区の神奈川宿歴史の道のパンフレット(説明2)は、宮前商店街をさらに進むと洲崎大神に出るとし、源頼朝が、安房国の安房神社の神をこの地に招いたのが、洲崎大神の始まりといいます、と記す。
- 同じパンフレットは、神社前の道を海側へ、第一京浜に出るあたりが舟着き場でした、と記す。
- 同じパンフレットは、かつて六月のお祭りには、みこしを神社前の海にかつぎ入れ、安房神社の神と対面させるお浜下りという神事が行われました、と記す。
- 同じパンフレットは、昔この神社にあった御神木のアハキがなまり、青木町の町名になったといわれていると記し、『江戸名所図会』に描かれた雰囲気は今も石鳥居や周囲の地形などに残っていると記す。
- 同じパンフレットは、普門寺が洲崎大神の別当寺であったため洲崎山と号し、真言宗智山派に属すると記す。寺号の普門は、洲崎大神の本地仏である観世音菩薩を安置したことによるとも記す。
- 横浜市神奈川区のかながわ歴史亀さんぽのパンフレットは、江戸時代には港湾都市としても繁栄し、洲崎大神の前あたりは海で、その沖の海面に弁才船が泊まり、そこから小さい船で荷物を陸に運んで、神奈川湊にある廻船問屋の蔵に荷物を収めていました、と記す。
- 同じパンフレットは、神奈川宿が東海道五十三次のひとつで、日本橋から三番目の宿場であり、この地名が県の名前や区の名前の由来になったと記す。洲崎大神については、源頼朝がつくったとも伝わる神社と記す。
- 同じパンフレットは、高島嘉右衛門が明治時代の初めに、野毛浦石崎から神奈川停車場まで、長さ約1.4キロメートル、幅65メートルにわたって海面を埋め立て、鉄道用の土手をつくったと記す。そのため埋立地は高島町と呼ばれるようになったとも記す。
- 横浜市神奈川区の歴史年表は、慶長6年(1601年)に東海道の宿駅伝馬の制が定められて神奈川宿が置かれ、安政6年(1859年)に神奈川が開港して神奈川と洲干のあいだの通船が始まり、明治4年(1871年)に高島町の埋立が完成し、明治5年(1872年)に新橋と横浜のあいだの鉄道が開業したと記す。
- 神奈川県神社庁は、洲崎大神の所在を横浜市神奈川区青木町5番29号とし、御祭神を天太玉命、天比理刀売命、素盞男命、大山咋命と記す。例大祭は6月6日以降の直近の金土日、境内神社は大鳥神社、井戸守稲荷社、元町稲荷社とする。
- 横浜市神奈川区は、甚行寺の本堂が開港当時は土蔵造で、改造を加えてフランス公使館に充てられたといわれていると記す。甚行寺は洲崎大神から旧東海道を西へ進んだ宮前商店街の山側にあり、そのあいだに普門寺がある。
そのため、このページではこうしています
- 位置は社殿のあたりに置いた。参道は社殿の前から南へまっすぐ伸び、旧東海道を横切って第一京浜に達する。
- 参道の向きは地図の座標から計算した。ほぼ真南で、真南から西へおよそ1度である。社殿の前から第一京浜までは約150メートル、旧東海道から第一京浜までは約87メートルになる。
- この社で見るべきは、地形と街の来歴が残した向きである。参道が何を指しているかは、立って南を向けば分かる。
- 参道と境内は、近隣の人が日々通る道でもある。歩くときは通行の妨げにならないようにし、境内では参拝の作法に従いたい。
- 周囲は住宅と商店に囲まれている。写真を撮るときは、住まいや暮らしが写り込まないようにしたい。
現地確認: 未実施
❓まだ分かっていないこと
この場所には、資料ではまだ確認できていない事柄がある。
- 洲崎大神の創建の年を示す記述は、横浜市神奈川区と横浜市の資料、および神奈川県神社庁の案内には見あたらなかった。
- 洲崎という名が砂州の先端という地形に由来するという記述は、横浜市神奈川区と横浜市の資料では確認できなかった。青木町の町名については、御神木のアハキがなまったという説明が区の資料にある。
- 舟着き場の正確な位置や広さを図で示した公的な資料には到達できなかった。区の資料は、第一京浜に出るあたりという書き方をする。
- 参道の位置や幅が昔から変わっていないかどうかを示す公的な資料には到達できなかった。
- お浜下りの神事が現在どのような形で行われているかを示す横浜市神奈川区の資料には到達できなかった。
- 社名の書き方が資料によって異なる。横浜市神奈川区のパンフレットと神奈川県神社庁は洲崎大神と書き、神社庁は別の呼び名として洲崎神社、洲崎様も挙げる。区の図書館が所蔵する写真の題は洲崎神社の例大祭であり、区のパンフレットが引く絵の題は『江戸名所図会 洲崎明神』である。
参考・出典
8件出典に基づいて掲載している
- 神奈川宿歴史の道 説明2(鉄道の開通と青木橋、甚行寺、普門寺、宮前商店街と旧街道、洲崎大神、権現山ほか)
横浜市神奈川区役所 - 神奈川宿歴史の道
横浜市神奈川区役所 - かながわ歴史亀さんぽ 裏面(神奈川の歴史 神奈川宿と神奈川湊)
横浜市神奈川区役所 - かながわ歴史亀さんぽ 表面(洲崎大神、埋立てと高島嘉右衛門ほか)
横浜市神奈川区役所 - かながわ歴史亀さんぽ
横浜市神奈川区役所 - 神奈川区の歴史年表
横浜市神奈川区役所 - 洲崎大神(神社の所在・御祭神・例大祭・境内神社)
神奈川県神社庁 - 甚行寺(じんぎょうじ)
横浜市神奈川区役所
訂正履歴
公開後に内容を改めた箇所を、日付とともに記録している。
- :年表で、京浜電気鉄道の開業区間を「品川と神奈川のあいだ」とだけ書いていたのを直した。区の歴史年表は品川-神奈川間、神奈川宿歴史の道の案内は川崎―神奈川間と書いており、資料によって分かれるため。
この場所について
この場所について、いま知っていることを教えてください。